60代おひとりさま、つれづれなるままに

上質な人生


論文原稿を昨日出しました。
今日はハウスキーピングのパートに行きました。
散歩をしたいのだけど、立春とは名のみの寒さの上、疲れも残っています。
図書館で借りたインテリア雑誌と本を読んで過ごしました。




右の本は以前触れた、つばたさん夫妻の日常スケッチの前編。再読です。
夫のしゅういちさんは、朝、日課の畑仕事をした後、仮眠の最中に亡くなりました。
急死であったにもかかわらず、その後の妻のひでこさんの対処は見事でした。


しゅういちさんは、冠婚葬祭の付き合いをしない人で、葬式もいらないと言っていた。
別のところに住む2人の娘さんと「お父さんの一番喜ぶことをしよう」と相談し、庭のアジサイを棺にいっぱい詰めた。ロープを結んで満艦飾にして家の前に張り、火葬場に送り出したというのです。


建築家で大学教授を務めたこともあるしゅういちさん。
新聞に訃報が載って、知人からお別れの会をという声もあったらしい。
でも、ひでこさんは考えた末、しゅういちさんが作っていたハブ茶のストックに、梅干しやジャムなども詰め合わせて30人くらいに挨拶として送ったのです。
その後、3カ月がかりで、50人くらいにしゅいちさんの晩年の様子を知らせる手紙を書いたそうです。


私の父のときもそうでしたが、本人が葬式や戒名はいらないと言っていたのに、いざ亡くなると葬祭業者に連絡してしまい、バタバタとことが進行してしまう。


もちろん一連の弔いの行事は、故人のためというより、残された人が気持ちの整理をしていく過程なのだから、頭ごなしに否定はできません。
でも、故人が望んでいない形で送ったという事実は消えません。


ひでこさんと2人の娘さんは本当にすばらしい。
お別れの会のパンフレットまで取りよせながら、やっぱりハブ茶でと考え直したひでこさん。普段から地に足の着いた、堅実な生活を送っていたからこそできた冷静な判断です。


夫唱婦随の、今では古いと言われる生き方かもしれないけれど、ひでこさんは本当に上質な人なのだとつくづく思いました。