60代おひとりさま、つれづれなるままに

在宅ワークと個室問題、ついでに源氏物語


東京にいる息子は、接客業で緊急事態宣言下でも出勤しています。
一方、息子の妻はデスクワークで、昨年の緊急事態宣言からずっと在宅ワークとか。
子どもはおらず、ワンルームに住んでいます。
以前、息子の妻とメールのやり取りをしていたら、「在宅が長びくと自分の部屋が欲しくなる」と言っていました。


引っ越しが無理なら、パーティションで区切ってコーナーを作る、ブースが借りられる施設を利用する、耳栓は必須アイテムですよと、思いつく限りのアドバイスをしました。
息子が平日休みの日は、なるべく外で過ごしてもらい、夕食の買い物をしてきてもらいなさいとも(^^♪


在宅ワークと個室の問題はメディアでも取り上げられています。


私も、今でこそ1人で書斎を贅沢に使っていますが、子どもたちが小さかった頃、個室を熱望していたので、その切実さがよくわかります。



話はそれますが、子どもに個室を与えるかどうかが議論されることがあります。
私は必要派!
勉強だけならダイニングテーブルやこたつででもできるけど、1人になれる空間は成長に欠かせないと思うからです。辛いとき思いっ切り泣いたり、ぼんやり空想に耽ったり。


そして、話がまた飛躍しますが、紫式部が千年も前にあんな長大な物語を書けた理由は、局(つぼね)という個室を与えられていたことが大きいと言われます。
彼女は、一条天皇の中宮であった彰子に仕えた女房です。
源氏物語を書き始めたことが評判になって、彰子の父藤原道長に招かれ、宮中に出仕したのです。新参でも個室の局を与えられたようです。


女房ですから、彰子の身の回りの世話やお出かけのお供もしなければならない。局で源氏物語を書いていて、呼ばれると取り散らしたままで部屋を出て、休憩時間に戻ってくるとまた続きを書く。
江戸時代の絵ですが、彼女が個室で文机を使っている様子がわかります。



一方、こちらは平安時代末に描かれた『病草子』という絵巻の一部、「不眠症の女」の絵です。当時も不眠があったということも面白いです。
でも注目したいのは、女房と見られる女性たちが雑魚寝をしていること。格下の彼女たちは個室を与えられていないのです。これでは、自分のものを取り散らしたままというわけにいきません。



鎌倉後期から室町時代には、女性の手になる物語や日記は衰退していきます。父系社会となり、女性の地位が相対的に下がり、女房が個室を与えられることはなくなります。


個室が創造の源であるのは興味深いことです。